5-ALA研究の第一人者、田中徹博士
独占インタビュー第一回

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今回は特別に、5-アミノレブリン酸(以下、5-ALA)研究の第一人者である田中徹博士に5-ALAとの出会いから開発についてお伺いしています。田中博士は、非常に困難と言われた5-ALAの大量生産の技術に、世界で初めて成功されたサイエンティストです。
第一回、第二回に分けてお届けします。
第二回はこちら

田中徹博士とサステナブル・クルー株式会社代表取締役西屋が並んでいる写真

【西屋】
当時(凡そ30年程前)は、5-ALA自体、有用性のある成分として認められていなかったのに、なぜ5-ALAの可能性を見出されたのですか?

【田中】
それがもうこれも笑っちゃうような話なんですけど、私達は発酵法で5-ALAを作ってます。それをピュアリフィケーション(精製)して植物に吹除草剤として枯れるんですね。でも畑に撒くんだからって、精製しないで発酵液のまま撒けばいいじゃないかと撒いてみたら枯れるどころか植物がたくさん生えてきまして、一体何が起こってるのかさっぱり分からなかったんですけど、宇都宮大学の雑草防除の先生の門を叩きましてね。すると先生が「これはクロロフィルの前駆体だから草生えたって当たり前だろう」みたいなことを言われまして。「ああ、そういうことか。発酵液の中にはマグネシウムとか鉄とか、ミネラルいっぱい入ってるから植物はかえってでかくなって、精製するとポルフィリンという化合物が溜まって枯れるんだと、そういうことが分かってきたんですね。で、まずは5-ALA入りの光合成があがる肥料を作ってですね、世界展開して今でも世界中で使われています。なぜ植物の光合成が上がるのかというと、光合成のシステムの中の電子伝達系を活性化してるっていうことが分かったんですね。その仕組みっていうのが、実は人のミトコンドリアの中の電子伝達系とそっくりなんですよ。当時5-ALAは毒物だと思われてたんですけどね。でもそんなことはない。ちゃんと金属と一緒になって、ヘムやシトクロムになってくれれば、人にもいい効果を及ぼすに違いないと、これも植物の時に経験していることですから、半ば確信してましたよね。

植物にも存在する5-ALA

それでヒトでも実験していくって言うか。動物でも実験していくと、しっかり効果が出たと。で、特にその加齢に伴って発症するような慢性病、昔でいうところの成人病ですね。糖尿病ですとか、高脂血症とかそういうものに素晴らしく効果があって、でそれらの病気の原因はミトコンドリアの機能低下。そのミトコンドリアの機能低下が外生的なアミノレブリン酸の投与で回復すると、こんなストーリーになってまして。私も元々が生物屋じゃなくて物理化学屋だったもんだから、植物も動物も生き物という意味だと似たようなものじゃないかと思ってましてね。で、この辺の話をその生物の専門のスタッフにすると、仰天されるんですけども、我々研究者って、酵母をやってる人は酵母以外触りませんからね。

【西屋】
田中博士は、様々な研究の分野を横断されていますね。

【田中】
格好良く言うとそうなんですけど、単純だから。もうミネラルと一緒だったら植物でデカくなるなら、人でもそうだろうみたいな。そんな乱暴な考えですね。それで今までの医薬関係の化学というのは、おおよそ一つのものに絞り込んで、それの反応を見る。これはもう大鉄則なんですね。他のものを全部排除して1個の成分で利かそうとしてるんですけど、アミノレブリン酸が直接働きかけてるんじゃなくて、できたヘムが活性を示してるわけですから、5-ALAだけ入れたって効かないわけです。それがこんなに大事なものなのに、今まで見落とされてきてて、私はたまたま素人だったんで、ラッキーにもそれを発見したということだと思います。ただ私が偉いんじゃなくて、アミノレブリン酸ですからね。そこを間違えないようにしないといけないと思います。

田中博士の5-ALAにまつわる話の続きは、次回お届けします。お楽しみに!
田中博士のインタビュー動画は、こちらからご覧いただけます。

オートファジーと5-ALAについて

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自分の細胞を食べるオートファジー?とは!

「オートファジー」のことをご存知ですか?オートファジーとは、日本語で「自食作用」という意味ですが、自ら自分の体を食べるわけではなく、正確には、細胞が自らの一部を分解して、新しい部品として再利用する仕組みのことです。私たちの体の細胞は、いつまでも元気なわけではなく、いずれ衰えてきます。しかし、このオートファジーの働きで細胞内の古くなった部品を分解し、新陳代謝によって新しい細胞へと生まれ変わらせる働きをします。また、細胞の中に現れる有害な物質を除去してくれます。

オートファジーの働きのイメージ図

わたしたちの細胞の中には、ミトコンドリアを始めとする細胞小器官が存在しますが、これらすべてがオートファジーの対象となり分解され、新たな部品に置き換えられます。特にミトコンドリアは、発電所の役割を担っていて、このミトコンドリアが壊れると「活性酸素」が漏れ出して細胞を傷つけたり殺したりします。ここにオートファジーの仕組みが働くことで、壊れたミトコンドリアを狙い撃ちして活性酸素の発生を抑えてくれます。また、細胞内に侵入した病原体もやっつけてくれるので免疫機能に対してもとても重要な役割を果たしています。

オートファジーは免疫力をアップさせて健康寿命を延ばすなど、体内の組織を健康に保つために重要な働きをしてくれますが、十分に食べ物を食べた状態ではあまり機能してくれません。元々オートファジーは、細胞が強いストレスを受けた際に生き残れるように体内に組み込まれたシステムで、細胞が飢餓状態になったり低酸素状態になったときにこそ、働きが活発化します。つまり、空腹の時間が長く続くとオートファジーの活動が活発になり、体の中にあるものを利用して新たにタンパク質を作り出します。満腹の状態ではオートファジーがあまり機能せず、空腹の時によく働くということで、昔から言われている「腹八分ぐらいで抑えるのが体にいい。」というのは理にかなっていますね。

食事、運動、睡眠でオートファジーを維持

オートファジーの機能を高めるためには、食事と睡眠が大切です。満腹状態では血中にアミノ酸がたくさんあり、オートファジーが抑えられるので、夕食を食べてすぐに寝るとオートファジーの活性を妨げます。夕食を食べてから寝るまでは時間を空けて、寝ている間に空腹な状態を作ることが重要です。また、よく眠り適度な運動を心がけ、脂っこい食事を控えて腹八分目程度で抑えることも、オートファジーの機能を維持させてくれます。

5-ALAもオートファジーに一役かっている!

5-ALAは体内で作られるアミノ酸の一種ですが、いくつかのアミノ酸自体がオートファジーを抑制的に制御することは古くから知られいます。5-ALAもそのうちの1つで、高知大学の研究によるとオートファジーを誘導し、ミトコンドリアの保護作用のある安全な成分として論文発表されています。

オートファジーの仕組みを解明した功績でノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典栄誉教授の研究ですが、それ以外にもまだまだ解明できていないことがたくさんあります。アメリカでは、オートファジーの仕組みを病気の治療に役立てようという応用研究が進んでいたり、まだまだ可能性が広がっていく分野なのです。

5-ALA研究情報

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5-ALA研究情報のタイトルのイラスト

現在、注目度が高まっている5-ALAは、あらゆる大学で研究が進められています。すでに研究を終えたものもありますが、今まさに研究が進められているものもあります。いくつか注目の研究について紹介しますので、興味がある方は、URLをクリックして各大学のサイトへアクセスしてみてください。

信州大学 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所
「5-アミノレブリン酸と鉄の摂取による運動効率の上昇効果に関する研究」
https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/ibs/topics/amhp/5-journal-of-applied-physiology.html

広島大学 大学院医系科学研究科「疲労感軽減に関する研究」
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/60472

長崎大学熱帯医学研究所 「新型コロナウイルス感染症に関する研究」
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science266.html

慶應義塾大学大学院医学研究科 「サルコペニア治療に関する研究」
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO70001001-20174781-0002

東京大学ALA先端医療学社会連携研究部門「難治性疾患に対する新規診断法、治療法に関する研究」
https://www.iqb.u-tokyo.ac.jp/lab/tani/

植物にも5-ALAが!

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植物でも働く5-ALA!

新型コロナウイルス感染症への感染抑制効果について話題になっている5-ALAは、実は植物にも含まれていて、植物が生長していくためにとても大切な働きをしているのをご存知ですか?私たちの体の中で作られる5-ALAは、鉄やミネラルなどと合成を繰り返し、ヘムやビタミンB12など様々な物質に姿を変えていきます。

植物にも存在する5-ALA

植物でも同じく植物の中で作られていて、植物の場合はミネラルの一種であるマグネシウムと組み合わさることで、植物の緑色の部分である葉緑素の原料になります。この葉緑素が増えると植物の光合成が盛んになり、丈夫で元気な植物になります。果実の場合は収量が増えて旨味も増えてくることから、肥料としても利用されています。

ALAサイエンスフォーラム発表資料より、お米の収穫量が向上したことを示すグラフ

光合成が活発になるので、あまり日の当たらない場所でも植物がうまく育ちます。また、根からの栄養吸収を高めてくれるので、通常なら枯れてしまうほどの低温や塩分の多い場所でも、5-ALAを与えるとたくましく育ってくれるのです。また、植林の定着率が上がるため、砂漠の緑化にも貢献できる可能性があると注目されています。

5-ALA配合肥料施用の、寒冷地におけるポインセチアの比較写真

除草剤の開発が発端

今では、肥料として利用されていますが、開発当初は全く逆で、5-ALAを使った除草剤の開発が行われていました。除草剤は毒性が強いことから、安全な除草剤の候補として5-ALAが使われていたのですが、実験中に枯らすはずだった植物に5-ALAの配合量を間違えて与えたところ、思いの外、植物が元気よく生えてきたのです。この思わぬ実験の失敗がきっかけとなり、5-ALAを肥料へと応用する研究開発が始まり、今では多くの農家さんや家庭園芸で利用され、海外でも高く評価されています。日陰の多い庭やベランダで植物をうまく育ててみたいという方は、5-ALA配合の肥料をぜひ試してみてはいかがでしょう。

サルコペニアの改善に繋がる 5-ALA

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「老化」の原因は?

あまり耳にしたくない「老化」という言葉ですが、個々の細胞レベルを見てみると、老化は生まれた直後から始まっています。若い頃は、機能が低下した細胞は取り除かれて、新しく細胞が補充されることで老化を防ぐことができていました。しかし、加齢と共に細胞が入れ替わるスピードが遅くなり、細胞を取り替えることができなくなり、組織の機能が低下して徐々に老化が進行していきます。この老化の大きな原因の一つは、私たちが動くためのエネルギーを作っている「ミトコンドリア」の質の低下が関係しています。老化のスピードは40歳代より加速すると言われていて、活性酸素を取り除く「抗酸化酵素」の能力が急速に減少してしまうからだと考えられています。

健康寿命は何歳?

日本人の平均寿命(2020年厚生労働省調べ)は、男性が81.64歳、女性が87.74歳で今や世界トップレベルに達し、まさに「人生100年時代」といわれるようになりました。しかし、平均寿命は伸びた一方で、他者の助けを借りることなく日常生活を営める「健康寿命」との差は9.4歳でその間、要介護の状態で過ごす方が多いのも事実です。

「65歳以上の高齢者の15%がサルコペニア?」

最近では、高齢者のサルコペニアが問題になっています。サルコペニアとは、加齢によって筋肉が減ったり、体力が低下している状態のことです。転倒しやすくなったり、骨折しやすくなることで、健康寿命や生活の質が大きく落ちてしまいます。サルコペニアを予防するには運動が重要で、特に抗重力筋と呼ばれる筋肉を強化することが大事です。抗重力筋とは、重力に抗って直立位を保つために必要な筋肉のことで、抗重力筋の中でも特に重要なのが、太ももの前面の筋肉やお尻の筋肉です。この2つの筋肉を鍛える運動は、空気椅子の運動が最適です。
椅子に座って立ち上がろうとする姿勢で、お尻が座面から浮いた状態で10秒静止します。それを3〜5回ほど繰り返し、馴れてきたら回数を少しずつ増やしていきましょう。(※腰痛などがある場合は症状を悪化させる場合があるので注意してください。)

空気椅子の運動をしているイラスト

サルコペニア病者用食品の開発にも5-ALA

過去に慶應義塾大学で行われた研究では、「5-ALAを投与したマウスは、筋力が向上し、骨格筋量も増加した」という結果がでていました。また現在、順天堂大学医学部で、65歳以上の方を対象に、サルコペニア状態にある方が5-ALAを摂取する病者食としての活用を検討する特定臨床研究が行なわれています。身体機能の低下は加齢と共に必ず起きますが、5-ALAが、サルコペニアの改善につながってくる未来も近いかもしれません。