野菜や花の苗を見かけるようになり、家庭菜園やベランダ栽培を楽しめる季節になりました。果実を付ける木々もたくさんの花を咲かせ、その香りに誘われるように、ミツバチや蝶たちが忙しそうに飛び回っています。これらの「ポリネーター(花粉媒介者)」と呼ばれる動物や昆虫は、野菜や果物の受粉には欠かせない存在です。中でもハチは最も優れたポリネーターといわれ、一つのコロニーに2万から8万匹のハチがいて数キロ先の花を目指して飛んでいくだけでなく、利用する花の種類がとても多く、ほとんどの作物の受粉を助けることができます。ミツバチに必要な花蜜と花粉を花から集めると同時に、花粉の媒介をすることで植物の再生産を助ける、とても賢く、そしてかけがえのない存在なのです。
そんな世界中のミツバチたちは、気候変動や農薬の使用など、人間の活動によって危機にさらされています。世界中のあらゆる場所で個体数が明らかに減ってきているのです。ほとんどの植物は動物や昆虫による受粉に依存していて、世界の主要な作物種の90%以上が受粉をミツバチに頼っています。野菜や果物だけではありません。家畜はミツバチの受粉に頼った餌を食べていますし、衣類に使われているコットンもミツバチの存在は不可欠です。ミツバチを失うことは、年間最大5770億ドル(約60兆円)の農作物が、受粉損失リスクにさらされているともいえ、ミツバチが私たち人間の生活や健康を支えているといっても過言ではありません。
私たちが日常生活でミツバチにできることは限られているかもしれません。しかし、日々食べられるものがミツバチたちの助けによって生産されたものだということを少しでも意識することが、ミツバチの未来を救うことにも繋がってくるのかもしれません。